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がん治療に漢方 東西両医学で環境整備へ(産経新聞)

2009-12-25

 今や、がん治療の側面支援にも使われる漢方薬。しかし、漢方への理解は医師の中でも浸透しておらず、政府の行政刷新会議の事業仕分けでは財務省資料にも上がるほどだ。危ぶまれた保険適用は無事に継続の見通しとなる中、東洋医学、西洋医学の専門家らの間では協力して漢方治療の環境を整えようとの機運が高まっている。(佐藤好美)

 ◆免疫力回復

 東京都内に住む男性会社員(46)は5年前、悪性リンパ腫(しゅ)と診断された。抗がん剤などによる治療法はあるが、再発率は高いタイプ。会社員は抗がん剤治療を受けながら、要所要所で漢方薬も使用した。「今、自分の命があるのは病原を攻撃する西洋医学と、患者の免疫力を上げる東洋医学の双方の力による。特に、抗がん剤投与後の免疫力や体力の回復では、漢方の助けに負うところが大きい」という。

 しかし、治療の過程では悩んだ。東洋医学と西洋医学の両方を提供してくれる医師はほとんどいない。この会社員も、がん治療を行う医師からは「漢方の使用を止めはしないが、勧めもしない」と言われた。漢方医からは抗がん剤治療に理解が得られず、真逆のアドバイスを受けたことも。

 「患者はただでさえ不安なのに、不完全な情報の中で難しい決断を迫られる。漢方の専門医らは科学的根拠をより充実させて多くの人に効用を理解してもらい、東西両医学の良いところを生かせる医師を多く育ててほしい」という。

 ◆良いところを合体

 こうした声に応える形で慶応大学の漢方医学センターとNPO健康医療開発機構、医療志民の会は今月10日、「漢方・鍼灸(しんきゅう)を活用した日本型医療を考える」と題するフォーラムを開いた。

 パネルディスカッションで司会進行に当たった国際医療福祉大学の黒岩祐治教授は、父親が肝臓がんの末に漢方治療を受けた。腫瘍(しゅよう)が格段に小さくなり、マーカーも下がった体験を紹介しながら、黒岩教授は「西洋医学の先生は『たまたま効く人もいるかもしれないけどね』と聞く耳持たずでしたよ」と不満をもらした。

 これに対し、いわば西洋医学の“代表”として壇上に並んだ土屋了介国立がんセンター病院長は「西洋医学はがんを根治させるという意味では限界がある。がんが全身に広がっていれば外科治療では難しいし、抗がん剤は固形がんを根絶やしにする力はない」としたうえで、「医者が患者を見ず、がんだけを見ると、抗がん剤の効果がない時点で『できることがない』となってしまう。AかBかではなく、いいところを合体してCを生み出す方法を考えることが重要」と応じた。

 黒岩教授や慶応大学漢方医学センターなどは研究班を発足。今年度中に人材育成などの環境整備を国に政策提言する方針だ。

                   ◇

 ■著しい改善例も妄信は禁物

 癌研(がんけん)有明病院では、星野惠津夫消化器内科部長が4年前から週2日、「漢方サポート外来」を行っている。患者は院内各科からの紹介の他、外部からの紹介もあり、日に30人に上る。

 星野部長は「カルテが電子化され、院内すべての医師が私の診療内容を見ることができる。紹介患者が増え続けているのは、漢方治療が有効と認められた証拠。漢方は最先端のがん専門病院で市民権を得られたと思います」と話す。

 がん治療は放射線治療や抗がん剤など苦痛を伴うものが多い。だが、漢方は手術後の全身倦怠感(けんたいかん)や体重減少、腸閉塞(へいそく)をはじめ、放射線治療による口腔(こうくう)乾燥、抗がん剤による下痢やしびれ、ホルモン療法によるホットフラッシュなども改善できるという。

 治療には、免疫力を上げる補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)などを基本に、腹診で決定した漢方薬、血の巡りをよくする駆★血剤(くおけつざい)、副腎皮質機能を上げる補腎剤(ほじんざい)などを使う。「漢方薬で症状が緩和されると、生活の質を保った延命が可能になる。肺転移した呼吸不全の患者が家族と最後の外国旅行を楽しんだり、進行膵(すい)がんでも、毎月のように温泉に通う方もいます」という。

 症状緩和だけではない。中には転移性肝がんの手術後、肝不全による黄疸(おうだん)が茵●蒿湯(いんちんこうとう)で劇的に改善した例や、胃がんや肝細胞がんの肺転移巣が消失した例もあるという。

 しかし、一方で漢方だけに頼るのは危険だと、星野部長は警鐘を鳴らす。「漢方を妄信すべきではない。西洋医学の最前線で漢方医学を駆使して初めて、臨床の質は上がる。すべてのがん専門病院に、漢方治療に通じた医師がいることが理想です」と話している。

★=やまいだれに於

●=くさかんむりに陳

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